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家庭における夫の「肩身の狭さ」の正体とは

「牛乳石鹸」の炎上CMは何を提示したのか

■牛乳石鹸のCMを観てますます肩身が狭くなった父親たち

 昨年の父の日。ひとつのウェブCMが放送された。(放送から1カ月後に)炎上することになる「牛乳石鹸」のCM「与えるもの編」である。(内容は前回の記事
 制作側である牛乳石鹸には“「家族思いの優しい父親」が増えつつある昨今、そこに収まっていながら、今のままでいいのかと感じる父親の葛藤、この時代にとっての「父性」とは何かを動画を見た人が考えるきっかけになってほしいと考えています。”(メディアリリースより)という意図があったらしい。つまり、肩身の狭い父親に対する救いを「与えるもの」であったはずだったのだが……。
 このCMを見た旦那はどんな感想を抱いたのか。ひと言でいえば、「ひどい旦那だな」である。子どもの誕生日の日に約束を守らない、連絡をしない。単純にひどい。いくら部下が怒られ、昔の自分に重なったとはいえ、ひと言連絡を入れればまだマシだ……と、そもそもフィクションであるCMに真剣に怒っても仕方ないのだが、同じことを妻や恋人、友人……誰がやっても怒るだろう。そういうレベルの話だ。
 だから多くの旦那が「これ以上、肩身が狭くなるようなことをしないでくれ」と思っている。この場合、「旦那全般がダメなのではなくて、この旦那がダメなんだ」から、と。それは、背中で語る昭和的な「父性」の否定でもない。ただとにかく、約束は守ろう、守れなくても最低限のことはしようということだ。

 さて、では「肩身が狭く」感じる理由はなんなのだろうか。本当に風潮だけだろうか。
 ここで、旦那が意識的であれ無意識的であれ感じているその正体について「旦那目線」で考えてみたい(妻に分かってほしい、という趣旨ではないことをご理解いただければありがたいです)。

 

正体1.そもそも俺だってつらいんだよ
 お金を稼いでる、という意識も含まれるだろう。取材をしていても「0~6歳の子育て世代」で収入を多く稼いでいるのは父親であることが9割以上を占めた。ただ、もしそれを笠に着ていたとしたら、それは「旦那」の問題ではなくて「うちの旦那」の問題だ(牛乳石鹸の旦那のように)。多くの「旦那」は、少しでも家族と一緒にいられるように、もっと妻を手助けしたいと思いつつ、第一にすべき「旦那の役割」を、お金を稼ぐための「仕事だ」と考えている。当然だが「仕事」は楽ではない。守るものがあるとなおさらだ。すると、家に帰っても、嫌な顔をされたり、否定的な言葉を言われたりすると、ムッとしてこう思う。「そもそも俺だってつらいんだよ」
 ただ、これは一方的に口に出してはいけない。つらいのはお互いさまだからだ。

正体2.スキル不足
 正体1の「旦那の役割」を「仕事」と捉えると書いたが、そもそも「男は一家の大黒柱だ」と思って「仕事」を「旦那の役割」だと思っているわけではない。むしろ、ほとんどの旦那は、子どもが産まれると分かってから「家事も育児もできるいいパパになってやろう」と意欲満々だった。「少し仕事をセーブしてイクメンになろうと思っていた」(37歳・2児の父)。
 しかし、ここから我々に立ちはだかるのは「スキル不足」という壁である。ミルクやり、オムツ替え、洗いもの、洗濯……圧倒的に育児・家事全般に対するスキルが足りないという事実にぶち当たる。
「一番つらかったのは、オムツ替えくらいもっと早くできるでしょ、と言われたこと。正直、自分だってもっと早くできると思っていたけど……」(同前)。他にも「洗い物をして、ちょっと妻と目があっただけなのに『一回洗い物したくらいで偉そうにしないで』と言われた。そんなつもりなかったのに。まあ、確かに『ありがとう』くらいは言われるかな、と思ったけど」(40歳・2児の父)。
 確かに(その是非は別として)日々、家事をしている妻から見れば「ふがいない出来」だろう。ただ、家事・育児のスキルは一朝一夕には身につかない。こうなってくると旦那は自身のできることを極めようと正体1にある「仕事を頑張ろう」という方へ傾倒していく。
 そういえば、前出の「イクメン志望」の父親は、子どもが3歳になった今、ぱっぱとオムツを変えられるようになったと言う。

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